重要事項説明書は、契約の直前に渡されます。宅地建物取引士が読み上げ、買主はそれを聞いて判断する。30ページ近いものを、その場で初めて見て判断するのは無理があります。先に読む場所を絞っておくための一覧です。
重要事項説明の記載事項は、宅地建物取引業法35条と、その施行規則が定めて います。項目ごとに号が振られているので、「第何号の欄を見せてください」 と言えば、担当者にそのまま通じます。
以下、条文の番号は e-Gov 法令検索で確かめたものです。 宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)
| 欄 | 根拠 |
|---|---|
| 登記された権利の種類と内容 | 法35条1項1号 |
| 法令に基づく制限の概要 | 法35条1項2号 |
| 飲用水・電気・ガス・排水の整備状況 | 法35条1項4号 |
| 契約不適合責任の履行に関する措置 | 法35条1項13号 |
抵当権が残っていないか、名義人が売主本人か。残っている場合、決済の日に 抹消される段取りになっているかまで確かめてください。売主本人でない名義が 入っていれば、その理由を聞く必要があります。
都市計画法・建築基準法などの制限がまとまっている欄です。用途地域、 建ぺい率、容積率、防火の指定、市街化調整区域かどうか。建て替えや増築で できることが、ここで決まります。
広告に書かれた建ぺい率・容積率と食い違っていないかを、この欄と 突き合わせてください。
未整備なら、整備の見通しと自己負担の額が書かれます。浄化槽か下水道かで、 毎月の費用も変わります。更地では、ここが数十万円から数百万円の差になります。
引渡し後に不具合が見つかったときの備えです。既存住宅売買瑕疵保険に 入るかどうかが、ここに書かれます。個人が売主の中古住宅では、責任の期間を 短く定めることが多いので、何か月と書かれているかを見てください。
物件の条件によって、書かれる欄が増えます。自分の物件に当てはまるものを 先に把握しておくと、読む場所が絞れます。
| 欄 | 根拠 | いつ書かれるか |
|---|---|---|
| 都市計画法の区域区分 | 法35条1項2号 | 市街化調整区域などのとき |
| 私道に関する負担 | 法35条1項3号 | 前面道路が私道のとき |
| 建物状況調査の結果と書類の保存状況 | 法35条1項6号の2 | 既存住宅のとき |
| 代金以外に授受される金銭/契約の解除 | 法35条1項7号・8号 | 手付金などがあるとき |
| 造成宅地防災区域内にある旨 | 規則16条の4の3第1号 | 区域内のとき |
| 土砂災害警戒区域内にある旨 | 規則16条の4の3第2号 | 区域内のとき |
| 津波災害警戒区域内にある旨 | 規則16条の4の3第3号 | 区域内のとき |
| 水害ハザードマップにおける所在地 | 規則16条の4の3第3号の2 | すべての取引 |
| 石綿(アスベスト)使用調査の結果 | 規則16条の4の3第4号 | 調査記録があるとき |
| 耐震診断の内容 | 規則16条の4の3第5号 | 旧耐震で診断済みのとき |
インスペクションを実施しているかどうかと、していればその結果の概要。 設計図書や点検記録が残っているかも、この欄で分かります。実施していなければ、 契約前に自分で手配できるかを聞いてください。
前面道路が私道なら、持分・通行・掘削の承諾が要ります。 承諾が取れないと給排水管の引き直しができません。覚書や承諾書の 現物があるかまで確かめてください。口約束では意味がありません。
昭和56年6月1日より前に新築工事に着手した建物で、耐震診断を受けている ときは、その内容が書かれます。書かれていなければ、診断を受けていない という意味です。「診断の結果、問題なし」ではありません。
調査の記録があるときに、その内容が書かれます。調査そのものを行う義務は ないため、記載が無いことは「使われていない」という意味になりません。 ここは読み違えやすい欄です。
| 欄 | 根拠 |
|---|---|
| 敷地に関する権利の種類と内容 | 規則16条の2第1号 |
| 専有部分の用途その他の利用の制限 | 規則16条の2第3号 |
| 修繕積立金の規約の定めと、既に積み立てられている額 | 規則16条の2第6号 |
| 通常の管理費用の額 | 規則16条の2第7号 |
| 維持修繕の実施状況の記録 | 規則16条の2第10号 |
敷地が所有権か借地権か。借地だと地代と期間、住宅ローンが使えるかまで 関わります。利用の制限はペット・楽器・事務所利用・リフォームの範囲で、 規約で決まっているのであとから変えられません。
維持修繕の実施状況の記録は、大規模修繕を何回、いつ実施したか。 記録が残っていない管理組合は、その事実自体が判断材料になります。
ここを混同している説明をよく見ます。管理費・修繕積立金の滞納額は、 重要事項説明の記載事項ではありません。
滞納額が載るのは、管理会社が出す重要事項調査報告書のほうです。 別に取り寄せてもらってください。滞納は、いずれ他の区分所有者が負担する ことになります。買ったあとの自分も、その「他の区分所有者」です。
物件状況報告書(告知書)と設備表も、重説とは別の書類です。雨漏り・ シロアリ・給排水の不具合について売主が申告するもので、中古住宅では こちらのほうが建物の状態をよく語ります。
重要事項説明書は、契約の当日に初めて見るものだと思われがちですが、 事前に写しをもらうことは可能です。断られる理由はありません。 「契約の前に重要事項説明書の写しをいただけますか」と頼んでください。
もらえたら、上の表と突き合わせて、空欄や「なし」と書かれた欄に印を 付けておきます。当日は、その印の欄だけ質問すれば済みます。 読み上げを聞きながら理解しようとするより、はるかに確実です。
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