「角地なので建ぺい率が10%増えます」。販売図面にも、現場の会話にもよく出てきます。条文を読むと、そうは書いてありません。増えるのは特定行政庁が指定した角地だけです。指定が無ければ、角地でも建ぺい率は素のままです。
建築基準法第53条第3項は、第一号または第二号のいずれかに該当する建築物に あっては第1項各号に定める数値に十分の一を加えたものをもって当該各号に定める 数値とし、第一号および第二号に該当する建築物にあっては十分の二を加えたものと する、と定めています。片方で+10%、両方なら+20%です。
二つの号は、性質がまったく違います。
| 号 | 何に対する緩和か | 誰が決めるか |
|---|---|---|
| 一号 | 防火地域内の耐火建築物等、準防火地域内の耐火・準耐火建築物等 | 建てる人(どんな建物を建てるか) |
| 二号 | 街区の角にある敷地またはこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するもの | 特定行政庁(その敷地が指定されているか) |
出典:建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第五十三条第三項 e-Gov 法令検索
二号に「特定行政庁が指定するもの」と書いてあるのが要点です。角にあれば 自動的にかかる緩和ではありません。角地であることは地図を見れば分かりますが、 指定があるかどうかは役所に聞かないと分かりません。
条文は「街区の角にある敷地又はこれに準ずる敷地」と書いています。角そのもの でなくても入りうる、という含みです。どこまでを準ずると見るかは特定行政庁が 決めるので、基準は自治体ごとに違います。
二つの道路の幅員の合計、隅切りがあるか、道路のなす角度が何度以内か。 こうした条件を要綱や取扱基準として示している自治体があります。全国で何件かを 数えたわけではないので、どこでもそうだとは書きません。ただ、条件が要綱に なっているということは、要綱を見れば分かるということでもあります。 角地に見えるかどうかで押し問答をする必要はありません。
ここが混ざりやすいところです。一号の緩和は、防火地域・準防火地域という 土地の側の条件と、耐火建築物等という建物の側の条件の両方が揃って初めてかかります。 防火地域にある土地というだけでは足りません。
だから土地を探している段階では、一号がかかるかどうかはまだ決まっていません。 何を建てるかをこれから選ぶからです。この診断が防火の緩和を自動でかけないのは、 そのためです。
なお一号には括弧書きがあり、第1項第二号から第四号までの規定により建ぺい率の 限度が十分の八とされている地域は除かれます。80%の地域で+10%にはならない、 ということです。そのかわり第6項第一号が、防火地域(限度が十分の八とされている 地域に限る)内にある耐火建築物等には前各項の規定を適用しない、と定めています。 80%の商業地域で防火地域に耐火建築物を建てるなら、建ぺい率の制限そのものが 外れます。
125㎡の土地、第一種住居地域、指定建ぺい率60%・指定容積率200%、 前面道路4mで計算してみます。
| 指定なし | 角地の指定あり | |
|---|---|---|
| 建ぺい率 | 60% | 70% |
| 建築面積の上限 | 75.0 ㎡ | 87.5 ㎡ |
| 使える容積率 | 160% | 160% |
| 延床の上限 | 200 ㎡ | 200 ㎡ |
動いたのは建築面積だけです。延床の上限は1㎡も増えていません。53条は 建ぺい率の条文であって、容積率には効かないからです。しかもこの土地は前面道路 4mで容積率が160%に頭打ちになっているので、指定容積率200%も使えていません。
では緩和に意味がないかというと、逆です。1階が75㎡か87.5㎡かは、注文住宅では 大きな違いになります。水回りを1階に収めやすくなり、総三階にせずに済む。 延床の上限を建築面積の上限で割った階数も下がる方向に動きます。 角地の緩和は、広さではなく形に効く緩和です。
無料の土地診断は、角地の緩和を一切かけません。住所から取れる公的データに、 その敷地が指定されているかどうかの情報が無いからです。角地に見える土地でも、 素の建ぺい率で計算します。
PROでは、都市計画の項目として四択で聞いています。
建ぺい率を上げるのは、二つめを選んだときだけです。三つめの「角地だが指定が あるか分からない」では上げません。指定の有無が分からないまま+10%で計算すると、 建てられない大きさの家を「建てられる」と言うことになります。
そして、角地の緩和だけは点数の足し引きをしていません。建ぺい率そのものが 変わるので、建てられる大きさを計算し直します。結果は建築面積と延床の数字に 出て、そこから延床14点・建築面積7点が付け直される、という順です。 「角地なので何点加算」では、何が起きたのか読めません。
市区町村の建築指導課か建築主事のいる窓口で、その敷地が53条3項2号の指定を 受けているかを聞けます。角地の指定について要綱を出している自治体なら、 要綱そのものをもらってください。条件が書いてあるので、隣の土地を買い増したら 該当するか、といった話も自分で読めるようになります。
指定されている場合でも、建築確認の段階で判断されるものなので、設計者に 「緩和を見込んだ計画かどうか」を確認しておくこと。緩和ありきの間取りを先に 描いてしまうと、外れたときに1階が12㎡ぶん縮みます。
この記事の数字は、診断の採点にそのまま使っています。土地を診断する(注文住宅) ・ PROで何を聞けるか見る