内見の時間は限られています。全部を見ようとすると、どれも見られません。この診断は建物の中を5項目に絞って聞いています。見つかったときに修繕費が大きいか、構造にかかわるかで選んだ5つです。
PROの入力でも、この5つだけを聞いています。重さは、見つかったときに 建物の点をどれだけ引くかです。
| 見る場所 | 引く幅 | なぜ重いか |
|---|---|---|
| シロアリ・腐朽 | 0.18 | 構造材そのものが傷む。範囲が見えない |
| 床の傾き | 0.15 | 不同沈下なら地盤の問題。直すのに基礎から要る |
| 基礎のひび | 0.15 | 構造にかかわる。幅と向きで意味が変わる |
| 雨漏りの跡 | 0.12 | 止まっていても、内部が腐っていることがある |
| 給排水の不具合 | 0.08 | 配管の更新は内装を壊すことになる |
設備(給湯器・キッチン・浴室・電気設備)も聞いていますが、動かす幅は 0.03までです。交換できるものと、交換できないものを、同じ重さにしない。
床下点検口を開けてもらってください。和室の畳の下や、洗面所の床にある ことが多いものです。見るのは土台と束。蟻道(ぎどう)と呼ばれる土の筋が 基礎を縦に走っていないか。玄関まわりと浴室の周囲は、特に傷みやすい場所です。
点検口が無い、開けられないと言われたら、それ自体を記録してください。 見られなかったという事実は、見て問題なかったことと違います。
ビー玉を転がす方法が知られていますが、床材のたわみでも転がります。 建具のほうが分かります。引き戸を半分開けて手を離し、勝手に動くか。 ドアが自然に閉まるか開くか。複数の部屋で同じ向きに動くなら、建物全体が 傾いている可能性があります。
スマートフォンの水準器アプリでも傾きは測れます。床の数か所で向きを 変えて測り、同じ方向に傾いているかを見てください。
外周を一周して、基礎のコンクリートを見ます。髪の毛ほどの細いひび (ヘアークラック)は、乾燥収縮で生じるもので、それ自体はよくあります。 気にするのは、幅が0.3mmを超えるもの、斜めに走るもの、鉄筋が見えているものです。
見つけたら、場所と向きを写真に撮ってください。補修した跡があるなら、 いつ何をしたかを聞く材料になります。
天井と壁の上部、押入れの天袋、最上階の部屋の隅。輪染みや、クロスの 浮き・剥がれを探します。直近に張り替えられたクロスがある部屋は、 なぜそこだけ新しいのかを聞いてください。
サッシの上、バルコニーの下にあたる天井も見る場所です。外からは 軒天(のきてん)の染みを見ます。
水を出してください。断られることは、まずありません。キッチン・洗面・ 浴室・トイレで、同時に出したときに勢いが落ちないか。排水の流れが遅くないか。 流したあとに、ゴボゴボと音が返ってこないか。
洗面台とキッチンの下の扉を開けて、配管の継ぎ目と床を見てください。 白い粉や、乾いた水の跡があれば、漏れた履歴があります。
中古住宅の売買では、売主が物件状況報告書(告知書)を書きます。 雨漏り、シロアリ、給排水の不具合について、知っていることを申告する書類です。 設備表には、各設備の有無と不具合の有無が並びます。
内見の前に、この2枚を見せてもらってください。1時間の内見でやることが、 最初から絞れます。「告知書に雨漏りの記載がありますが、どこですか」と 聞ける状態で行くのと、ゼロから探すのとでは、見つかるものが違います。
ここは正直に書きます。壁の中、床下の奥、屋根の上は、内見では見えません。 基礎の中の鉄筋も見えません。素人が1時間見て「問題なし」と判断するのは、 無理があります。
建物状況調査(インスペクション)は、建築士が目視で調べるものです。 宅建業法35条1項6号の2により、実施しているかどうかは重要事項説明書に 書かれます。実施していなければ、契約前に自分で手配できるかを聞いてください。
懐中電灯(床下と天井裏)、メジャー、水準器アプリの入ったスマートフォン、 そして告知書と設備表の写し。スリッパではなく靴下で歩くと、床の違和感が 分かりやすくなります。
最後に一つ。気になったことは、その場で口に出して記録してください。 あとで思い出して聞くと、「そんなことは言っていない」になりがちです。 内見に同行している担当者に、その場で質問として投げておくと、 記録が残ります。
この記事の数字は、診断の採点にそのまま使っています。戸建を診断する ・ PROでできることを見る