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建ぺい率は、用途地域ごとに選べる値が決まっています

2026-09-22 / 長沢 銀河(宅地建物取引士) 運営者について

建ぺい率は、市区町村が好きな数字を決められるものではありません。用途地域ごとに、選べる値が法律で列挙されています。だから「商業地域で建ぺい率60%」という土地は、日本のどこにも存在しません。

条文は、六つの号でできている

建築基準法第53条第1項は、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合(建蔽率)は、 次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を超えてはならない、と定めて、 六つの号を並べます。表にするとこうなります。

用途地域都市計画で定められる値
第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、 田園住居地域、工業専用地域30・40・50・60%
第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域 50・60・80%
近隣商業地域60・80%
商業地域80%
工業地域50・60%
用途地域の指定のない区域30・40・50・60・70%

出典:建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第五十三条第一項 e-Gov 法令検索。 条文は十分の三・十分の八という書き方なので、%に直してあります。

読み方のこつは、各号が「このうち都市計画において定められたもの」と結んで いることです。国が選択肢を用意し、その中から都市計画で一つを選ぶ。用途地域が 決まっていれば、建ぺい率の候補は数個に絞られます。

商業地域だけ、選ぶところがない

四号を見ると、商業地域内の建築物は十分の八とだけ書いてあります。「のうち 定められたもの」がありません。商業地域の建ぺい率は80%で固定です。 都市計画で60%と定めることはできません。

この一点が、あとで出てくるデータの矛盾を見つける手がかりになります。

用途地域が指定されていない区域は、別の決め方をする

六号だけ、書き方が違います。30・40・50・60・70%のうち、特定行政庁が土地 利用の状況等を考慮し当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て 定めるもの、と続きます。市街化調整区域や非線引きの白地地域がこれにあたり、 ここだけ70%という選択肢が出てきます。

都市計画で一律に決まっているのではなく、区域を区分したうえで審議会を通して 決める。だから、隣の集落と数字が違うことがあります。ここは役所で聞くのが いちばん早いところです。

敷地が二つの地域にまたがるとき

第53条第2項が、その場合を書いています。建蔽率の限度に、その敷地の当該地域内 にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下、と。 面積で按分した加重平均です。

200㎡の敷地のうち120㎡が建ぺい率60%の地域、80㎡が80%の地域にかかって いれば、60×0.6+80×0.4=68%。中途半端な数字が出るのが正常です。 この診断は一つの地点の値しか取れないので、またがる敷地には対応していません。 販売図面に用途地域が二つ書いてあったら、その時点でこの計算は合っていない、 と思ってください。

この表を、コードに持っている理由

本番で実際の住所を通したとき、結果にこう出ていました。

敷地125㎡ ・ 商業地域 ・ 前面道路4.0m
指定建ぺい率60% / 指定容積率200%

四号により、この組み合わせは存在しません。調べると、原因は公的データの 持ち方にありました。不動産情報ライブラリの用途地域の面は、地点を含むポリゴンに 建ぺい率と容積率だけが入っていて、用途地域の名前が空、ということがあります。 名前が空のときに隣の面から借りると、別の土地の用途地域が、この土地の ものとして出ます。

そこで、53条1項の表をそのままコードに持たせました。用途地域の名前と建ぺい率が この表に照らして矛盾していたら、名前のほうを捨てて「用途地域は取得できず」と 表示します。建ぺい率と容積率は、その面に実際に入っていた値なので残します。

名前を捨てるほうを選んだのは、名前が点に効くから

用途地域は表示だけの項目ではありません。前面道路による容積率の係数 (法52条2項)が、住居系なら幅員×0.4、それ以外は×0.6と分かれます。 前面道路4mの土地なら、住居系で160%、商業系で240%。80ポイントの差が、 延床の上限にそのまま乗ります。

さらに、第一種・第二種低層住居専用地域と田園住居地域には、法55条の 絶対高さ制限(10mまたは12m)がかかります。名前を間違えれば、建てられる家の 形の話が丸ごとずれます。表示が少し外れているという話では済みません。

間違った名前のまま採点を続けるより、名前が分からないとして情報充足度を 下げるほうが、この診断の立て付けに合っています。

分からないことを、矛盾と呼ばない

この判定には、もう一段の手加減が入れてあります。用途地域の名前と建ぺい率が 揃っていないときは、判定そのものをしません。表に無い名前が来たときも同じです。 名前を捨てるという強い処置に使う以上、確かに矛盾していると言えるときだけ 矛盾と判定する、という作りにしています。

たとえば「用途地域の指定のない区域」は、六号で30〜70%の幅があり、その幅は 特定行政庁が区分して決めます。こちらからは何が正しいか分からないので、 矛盾かどうかも判定しません。

名前の照合にも順番があります。「商業地域」は「近隣商業地域」の一部でもあるので、 短いほうを先に当てると、近隣商業の60%を「商業地域なのに60%」と誤判定します。 長い名前から順に照らしています。第一種住居地域と第一種中高層住居専用地域も、 取り違えると一号と二号で答えが変わる組み合わせです。

紙で確かめるとき、どこを見るか

建ぺい率は、重要事項説明書の都市計画法・建築基準法にもとづく制限の欄に 書いてあります。ここに書かれた数字と、用途地域の欄が、上の表と合っているか。 合っていなければ、どちらかが写し間違いです。

役所で聞くなら、市区町村の都市計画課。用途地域・建ぺい率・容積率・防火の 指定・高度地区を、一度に教えてもらえます。敷地が二つの地域にまたがって いないかも、このとき一緒に聞いてください。またがっていれば、上の加重平均に なるので、広告の数字はそのままでは使えません。

この記事の数字は、診断の採点にそのまま使っています。土地を診断する(注文住宅) ・ 見本の結果を見る

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