新築の広告で「省エネ基準適合」と書かれていても、それは他より優れているという意味ではありません。2025年4月以降に着工する新築住宅は、原則すべて適合が義務です。満たしていて当たり前のものになりました。
令和4年に改正された建築物省エネ法により、第10条の適合義務の対象が広がり ました。国土交通省の説明では「原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準 適合が義務付けられます」とされ、対象は「施行日以後に工事に着手する建築物の 建築」です。
除かれるのは「エネルギー消費性能に及ぼす影響が少ないものとして政令で 定める規模(10㎡を想定)以下のもの」だけで、住まいとして建てるものは まず入ります。適合しているかどうかは「建築確認の中で、構造安全規制等の 合規性審査と一体的に実施されます」。
出典:国土交通省「【建築物省エネ法第10条】省エネ基準適合義務の 対象拡大について」 mlit.go.jp/jutakukentiku/house/01.html
境目は着工日です。契約日でも完成日でもありません。2025年の前後に 建った家を見ているなら、いつ工事に入ったかで扱いが変わります。
ひとつの数字ではありません。二つを両方満たして「適合」になります。
| 基準 | 見ているもの |
|---|---|
| 外皮性能基準 | 外壁・窓などを通じて熱がどれだけ逃げるか |
| 一次エネルギー消費量基準 | 暖冷房・給湯・照明などを合わせた建物全体の消費量 |
断熱だけ良くても、設備が古くて消費量が大きければ通りません。逆に設備で 稼いでも、窓がそのままなら外皮で引っかかります。「断熱等級◯」という表示は このうち外皮の側の話で、省エネ基準そのものとは別の物差しです。
ZEH水準は、義務になった省エネ基準より高い水準を指します。国は2030年度までに 省エネ基準そのものをZEH水準へ引き上げる方針を示していて、いまZEH水準で 建てられている家は、将来の当たり前を先に満たしていることになります。
裏を返すと、いま「適合」でしかない新築は、2030年代の基準から見ると 下回った家になります。いま建てる家を20年30年で考えるなら、義務を満たした かどうかより、ZEH水準に届いているかのほうが効いてきます。
PROの詳細診断では、省エネ性能を三つで聞いています。点の動かし方はこうです。
| 回答 | 物件の評価への調整 |
|---|---|
| ZEH水準の省エネ性能 | +0.05 |
| 省エネ基準に適合 | ±0 |
| 省エネ基準に適合していない | −0.05 |
適合をプラスにしていないのは、義務を果たしただけのものに加点すると、 その分だけ他の項目の重みが薄まるからです。基準を満たすのは出発点であって、 差がつくところではありません。
「適合していない」を引いているほうには意味があります。中古住宅なら 珍しいことではなく、それ自体は責められる話ではありませんが、住んだあとの 光熱費と、将来売るときの見え方には効きます。
義務は2025年4月着工からです。それ以前に建った家に適合義務はありません。 中古で「適合していない」と答えることになっても、法令違反ではありません。
ただし住宅ローン控除では、省エネ性能の区分によって借入限度額が変わります。 中古の住宅ローン控除の記事に、 区分ごとの限度額を書きました。
性能の話は言葉で聞くと曖昧になります。書類の名前で聞いてください。 新築なら設計住宅性能評価書、BELSの評価書、省エネ計算書(外皮性能と一次 エネルギー消費量の計算結果)。いずれかがあれば、等級も数値もそこに書いて あります。
中古で何も出てこないときは、「無い」という答えがそのまま情報です。 築年と窓の様子(単板ガラスか複層か)から、おおよその見当はつきます。 その場合は、断熱改修にいくらかかるかを別に見積もっておくほうが、 カタログの等級を探すより早く済みます。
この記事の数字は、診断の採点にそのまま使っています。築年から建物の評価を見る