自分が買おうとしている部屋の、同じマンションの別の部屋がいくらで売れたか。いちばん知りたい数字です。ところが公的な取引価格情報には建物名が入っていません。名前で探すことが、そもそもできません。
国土交通省の不動産情報ライブラリが出している取引価格情報には、 実際の成約が1件ずつ入っています。全項目を実データで確認しました。 マンションの成約で使えるのは、おおむね次のとおりです。
| 入っている | 入っていない |
|---|---|
| 都道府県・市区町村・町名まで | 番地・建物名・部屋番号 |
| 成約価格 | 売主・買主 |
| 専有面積(丸めた値) | 間取り図 |
| 建築年 | 管理組合・修繕の履歴 |
| 成約時期(年・四半期) | 成約日 |
個人が特定されないよう匿名化されているからです。場所は町名までしか 出ませんし、面積も丸められています。これは不備ではなく、設計です。
この診断は、町名が一致し、建築年が完全に一致する成約を集めて、 「同じ建物の可能性がある成約」として別枠で出しています。
同じ町に、同じ年に完成したマンションはそう多くありません。だから 同一建物である可能性は高い。ただし可能性であって、断定ではありません。 同じ年に2棟建った町はありますし、隣町との境なら町名も当てになりません。
だから画面には必ずこう添えています。
取引価格情報に建物名は含まれないため、同一マンションとは
断定できません。町名と築年が一致する成約を集めたものです。
断定できないものを断定しないために、この一文は消していません。
同じ建物の成約は、ほかのどんな類似事例よりも参考になります。立地も 構造も管理も同じで、違うのは階数・向き・専有面積だけだからです。
いっぽうで、これはこちらが立てた推測にすぎません。推測を 「同じ建物の成約です」と言い切って点数に効かせると、推測が数字に化けます。 だから別枠に置き、断定しない一文を必ず添えています。
読む人が目で見て判断する材料としては出す。推測は、推測のまま置いておく。 その線を引いています。
専有面積は丸めて記録されているので、70㎡の部屋も74㎡の部屋も同じ値で 出てくることがあります。㎡単価を出すときは、ここで数%の誤差が乗ります。
同じ建物の成約を見るときも同じです。「70㎡が5,800万円」と出ていても、 実際には何㎡か分かりません。㎡単価の小数点以下を比べても意味がないので、 幅として読んでください。
公的データから建物名は取れませんが、管理組合には過去の売買の記録が 残っていることがあります。重要事項調査報告書を取れば、管理費・修繕積立金の 滞納状況や大規模修繕の履歴も一緒に分かります。
仲介業者に聞くなら、「このマンションで、直近に成約した住戸の価格を 教えてください」。レインズを見られる立場にあるので、答えられる質問です。 答えにくい場合でも、売出中の住戸であれば公開情報です。
この診断が出す「同じ建物の可能性がある成約」は、その質問をする前の 下調べだと思ってください。何件くらい、どのくらいの価格帯で動いているかが 分かっていれば、返ってきた答えが妥当かどうかを自分で判断できます。
この記事の数字は、診断の採点にそのまま使っています。マンションを診断する ・ 見本の結果を見る