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土砂災害の警戒区域と特別警戒区域。違うのは規制の中身です

2026-09-05 / 長沢 銀河(宅地建物取引士) 運営者について

イエローとレッドは、危険度の色分けではありません。警戒区域には建築の制限がなく、特別警戒区域にはあります。指定の根拠も、土砂災害防止法の第7条と第9条で別々です。

特別警戒区域は、警戒区域の内側にある

どちらも都道府県知事が指定します。警戒区域は、崩壊などが起きたときに 住民等の生命または身体に危害が生ずるおそれがあり、警戒避難体制を特に 整備すべき区域(土砂災害防止法第7条第1項)。特別警戒区域は、その警戒区域の うち、建築物に損壊が生じて著しい危害が生ずるおそれがあり、一定の開発行為の 制限と、居室を有する建築物の構造の規制をすべき区域です(同法第9条第1項)。

条文が「警戒区域のうち」と書いているとおり、特別警戒区域は必ず警戒区域の 中にあります。レッドだけが指定されている土地はありません。

指定は、土砂災害の発生原因ごとに行われます(第7条第2項)。同法第2条が いう土砂災害は、急傾斜地の崩壊(傾斜度が30度以上である土地が崩壊する自然 現象)、土石流、地滑り、河道閉塞による湛水です。同じ土地が、急傾斜地の崩壊と 土石流の二つの原因で指定されていることがあります。

警戒区域でかかるのは、避難の備え

警戒区域の指定があると、市町村防災会議は市町村地域防災計画に、情報の 収集と伝達、避難場所と避難経路、避難訓練の実施、区域内の要配慮者利用施設の 名称と所在地、救助に関する事項を定めます(第8条第1項)。市町村長は、 これらを印刷物の配布などで住民に周知しなければなりません(同条第3項)。

土砂災害防止法そのものは、警戒区域内の建築や開発を制限していません。 かかるのは、行政と住民の側の備えです。

買う側から見て確実なのは、説明を必ず受けられることです。宅地建物取引業法 施行規則第16条の4の3第2号(法第35条第1項第14号イ)により、宅地建物が警戒 区域内にあるときはその旨を説明します。売買でも賃貸でも対象です。ただし 義務は「その旨」まで。どの発生原因で指定されているか、敷地のどこまでが かかっているかは、重要事項説明書からは読み取れないことが多くあります。

特別警戒区域でかかるのは、開発と構造の規制

特別警戒区域内で特定開発行為をするには、都道府県知事の許可が要ります (第10条第1項)。ここでいう制限用途は、住宅(自己の居住の用に供するものを 除く)と、高齢者・障害者・乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者が利用する 社会福祉施設、学校、医療施設です(同条第2項)。自分が住む家を建てるための 開発行為は、この制限用途に当たりません。分譲や賃貸の住宅とは扱いが違います。

建物のほうには二つかかります。居室を有する建築物は、想定される衝撃に対して 安全になるよう、建築基準法第20条第1項にもとづく政令で構造耐力の基準が 定められています(第24条)。あわせて、建築基準法第6条第1項第3号の区域内の 建築物とみなされ、建築確認の対象になります(第25条)。都市計画区域の外でも、 確認が要るということです。

さらに、著しい危害が生ずるおそれが大きいと認めるときは、都道府県知事が 建築物の移転その他必要な措置を勧告できます(第26条第1項)。勧告であって 命令ではなく、勧告した場合には土地の取得のあっせん等に努めるとされています (同条第2項)。

第10条第1項の許可は、宅地建物取引業法施行令第2条の5第34号に 挙がっています。法令に基づく制限としても説明の対象になるということです。

中古の家を買ってそのまま住むだけなら、これらは直接には効いてきません。 効くのは建て替えと増築のときです。買う前に、いま建っている家を将来 建て替えられるか、そのとき何が要るかを確かめてください。

名前の似た区域が、別の法律にもある

急傾斜地崩壊危険区域は、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条 第1項による指定です。区域内では、のり切・切土・掘削・盛土、立木竹の伐採、 土石の採取などが都道府県知事の許可制になります(同法第7条第1項)。

地すべり防止区域は、地すべり等防止法第3条第1項によるもので、指定するのは 主務大臣です。この診断の結果画面では、国土数値情報の名称に合わせて 「地すべり防止地区」と表示しています。

いずれも土砂災害防止法とは別の法律なので、警戒区域と重なることも、 片方だけのこともあります。両方とも、区域内の行為制限が宅地建物取引業法 施行令第2条の5(第32号・第33号)に挙がっています。

この診断での減点

リスクは15点満点です。0から1の評価を出して、最後に15を掛けています。 土砂に関わる区域は、次のように効かせています。

該当する区域リスクの扱い
土砂災害特別警戒区域4.5点以下に抑える
土砂災害警戒区域8.25点以下に抑える
急傾斜地崩壊危険区域7.5点以下に抑える
地すべり防止地区7.5点以下に抑える

特別警戒区域をいちばん重く見ているのは、建て替えのときに開発許可と構造の 規制が効いてくるからです。避難の備えは住み方で変えられますが、建てられる 建物の中身は住む人には変えられません。マンションの診断はリスクが13点満点で、 割合の付け方は同じです。

見ているのは、国土交通省 不動産情報ライブラリの土砂災害警戒区域データ (XKT029)です。住所から求めた座標が区域のポリゴンの中に入るかで判定して います。点で判定しているので、敷地の一部だけが区域にかかっている場合は 拾えません。

もう一つ、正直に書いておきます。この診断は洪水・土砂・津波・高潮の四つを まとめて取りに行き、そのうち一つでも取得できれば「ハザードを確認した」 として扱っています。土砂だけ取得できなかったときの表示は、該当なしのときと 同じになります。四つとも取得できなかった場合は、確認できていないものとして 10.5点までに抑えます。

洪水の浸水深の扱いは洪水ハザードの浸水深は6段階に、 液状化と盛土は液状化と大規模盛土造成地に書きました。

契約前に、自分の目で確かめること

都道府県が公表している土砂災害警戒区域等のマップで、物件の位置と区域の 境界を突き合わせてください。見るのは三つです。イエローとレッドのどちらか、 発生原因の種類(急傾斜地の崩壊・土石流・地滑り)、そして建物と敷地の どこまでがかかっているか。

火災保険で土砂崩れによる損害が対象になるかは、水災補償を付けているかで 変わります。区域に入っているなら、見積もりの段階で確かめる価値があります。

仲介の担当者には、重要事項説明書とは別に区域の指定図の写しを求めて ください。重説に書かれる「区域内にある旨」だけでは、敷地のどこがどう かかっているかは分かりません。特別警戒区域が敷地の一部にかかっている土地は 珍しくなく、そのかかり方で建て替えの計画は変わります。

この記事の数字は、診断の採点にそのまま使っています。住所を入れてハザードを確かめる ・ 土地を診断する(注文住宅)

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出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ/国土地理院
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