「住宅の診断」と検索すると、出てくるのはホームインスペクション、つまり建物の検査です。この診断はそれとは別物で、建物の中は一切見ていません。見ているのは住所から引ける公的データです。何がどちらに映り、何がどちらにも映らないかを知っておけば、使い分けができます。
宅地建物取引業法は、中古住宅の取引にかかわる建物の調査を「建物状況調査」として定めています。調べる部位と、調べる人が決まっています。
| 区分 | 部位 |
|---|---|
| 構造耐力上主要な部分 | 基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かいなど)、床版、屋根版、横架材(はり・けたなど) |
| 雨水の浸入を防止する部分 | 屋根、外壁、開口部の戸・わく・建具、雨水を排除するための排水管(屋根・外壁の内部か屋内にある部分) |
出典:宅地建物取引業法施行規則 第15条の7
給湯器、キッチン、浴室といった設備は、この一覧に入っていません。給排水管も、雨水の排水管を除けば対象の外です。設備まで見てほしいなら、法定の範囲の外として依頼先と個別に決めることになります。
建築士で、かつ国土交通大臣が定める講習を修了した人が、大臣の定める基準に従って行います(施行規則第15条の8)。
| 場面 | 書かれること | 条文 |
|---|---|---|
| 媒介契約 | 建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項 | 宅建業法34条の2第1項4号 |
| 重要事項説明 | 調査を実施しているか、している場合は結果の概要。設計図書・点検記録などの保存の状況 | 35条1項6号の2 |
| 売買契約書 | 構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者の双方が確認した事項 | 37条1項2号の2 |
重要事項説明に載るのは、調査から1年以内のものだけです。鉄筋コンクリート造などの共同住宅は2年です(施行規則第16条の2の2)。それより前の調査は、実施していても説明の対象になりません。
法律が義務にしているのは、あっせんするかどうかを書くことと、実施したかどうかを説明することまでです。調査そのものは義務ではありません。誰も頼まなければ、調査なしで取引は進みます。
| 見るもの | 建物状況調査 | この診断 |
|---|---|---|
| 基礎・柱・外壁の劣化、雨漏りの跡 | 見る | 見ない |
| 給湯器・キッチン・浴室 | 対象外 | 見ない |
| 近隣の成約価格との比較 | 見ない | 見る |
| 洪水・土砂災害・液状化の区域 | 見ない | 見る |
| 用途地域・将来の人口 | 見ない | 見る |
| 築年と構造からみた古さ | 見ない | 見る |
建物状況調査は建物の今の状態を、この診断は建物の外側、つまり場所と価格と制度を見ています。片方で、もう片方の代わりはできません。
この診断は、建物の状態を調べていないことを減点にしていません。調べていないことは、情報充足度が下がる形で画面に出します(情報充足度の記事)。
調査は、決められた部位を、その日に見られた範囲で見たものです。床下や小屋裏に入れなかった、家具で壁が見えなかった、という箇所は、報告書にそう書かれることがあります。
報告書で「指摘なし」が並んでいても、それは調べられた箇所の話です。調べられた結果と同じくらい、調べられなかった箇所の欄を読んでください。
調査は売主の家に入って行うので、売主の承諾が要ります。仲介会社を通して日程を組むことになります。
契約の後に問題が見つかっても、そこから引き返すには手付金を手放すことになります。結果を見てから契約するか決めたいなら、調査は申込みから契約までの間に入れる必要があります。契約の後に見つかった不具合を売主に直してもらえるかは、契約不適合責任の特約しだいです。
この物件で、1年以内に建物状況調査をしていますか。
していなければ、契約の前に入れられますか。
仲介会社への最初の質問は、この2つで足ります。