2026年4月1日に、改正された区分所有法が施行されました。いちばん大きな変化は、マンションの総会の決議を出席した人の数で数えるようになったことです。これまで欠席は、事実上「反対」と同じに働いていました。いまは、欠席すれば決定に加わらないだけです。修繕も建替えも決まりやすくなり、買う側には見ておくことが増えました。
改正したのは「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第47号)です。 2025年5月30日に公布され、区分所有法の改正部分は2026年4月1日に施行されました。主な変更を、改正前と並べます。
| 決めること | 改正前 | 改正後 | 条文 |
|---|---|---|---|
| ふつうの議案(管理費、役員、修繕の実施など) | 区分所有者全体の過半数 | 出席した区分所有者の過半数 | 39条1項 |
| 共用部分の変更 | 区分所有者全体の4分の3以上 | 過半数が出席したうえで、出席者の4分の3以上 | 17条1項 |
| バリアフリー化のための変更や、共用部分の欠陥が他人の権利を侵害するおそれがあるときに、その欠陥を除くための変更 | 同上(4分の3) | 過半数が出席したうえで、出席者の3分の2以上 | 17条5項 |
| 建替え | 全体の5分の4以上 | 全体の5分の4以上。決まった条件にあたる建物は4分の3以上 | 62条 |
| 一棟リノベーション、建物と敷地の売却、取り壊して敷地を売却、取壊し | (区分所有法には無かった) | 全体の5分の4以上。条件にあたる建物は4分の3以上 | 64条の5〜64条の8 |
このほか、連絡のつかない区分所有者を決議の数から外す裁判(38条の2)、海外に住む区分所有者が国内の管理人を選べる制度(6条の2)、管理が不適当な専有部分や共用部分に裁判所が管理人を付ける制度(46条の8・46条の13)ができました。区分所有者は、管理が適正かつ円滑に行われるよう相互に協力しなければならない、という責務の規定も入りました(5条の2)。
総戸数100戸、1戸1票のマンションで、60戸が総会に出席したとします。
| 議案 | 改正前に要った賛成 | 改正後に要る賛成(60戸出席) |
|---|---|---|
| ふつうの議案 | 51戸 | 31戸 |
| 共用部分の変更 | 75戸 | 45戸 |
共用部分の変更は、出席が全体の過半数(この例なら51戸)に届かないと決議できません。ふつうの議案には、法律上この出席の下限がありません。下限は管理規約で決めます。書面や代理人で議決権を使った人は、出席した人に数えます(39条2項)。
改正前は、総会に来ない人、委任状も出さない人は、賛成の数に入らないので反対したのと同じでした。古いマンションほど、住んでいない所有者や連絡のつかない所有者が増え、必要な修繕すら決められないことがありました。国交省の推計では、築40年以上のマンションは2025年末で約158.8万戸あり、 10年後には約313.1万戸、20年後には約503.6万戸に増える見込みです。
出典:国土交通省「築40年以上の分譲マンション数の推移」(2025年末現在)。建築着工統計等から推計した分譲マンションのストック戸数と、国交省が把握している除却戸数から推計したもの
区分所有者が誰か分からない、またはどこにいるか分からないときは、ほかの区分所有者か管理者が裁判所に請求し、その人を除いて決議できるという裁判を受けられます(38条の2)。裁判を受けた区分所有者は、議決権を持ちません。
自動で外れるわけではなく、裁判所の手続きが要ります。管理組合が実際にこの制度を使ったかどうかは、総会の議事録で分かります。
建替えは、これまでどおり区分所有者全体と議決権の各5分の4以上が原則です。こちらは出席者ではなく、全体で数えます。ただ、建物が次のどれかにあたる場合は4分の3以上に下がりました(62条2項)。
どれも、法務大臣が定める基準にあたるかどうかで決まります。そして新しく、建て替えずに一棟まるごと造り替える「建物更新」、建物と敷地の売却、取り壊して敷地を売る、取り壊すだけ、の4つの決議ができました。要件は建替えと同じで、上の条件にあたれば4分の3に下がります。
決議に賛成しなかった人にも、話は及びます。建替え決議のあと、参加しない人は区分所有権と敷地利用権を時価で売り渡すよう請求されることがあります(63条5項)。この請求は、決議のあとにその住戸を買った人(承継人)にも及びます。旧耐震のマンションの決議要件については旧耐震のマンションは資産性を0.6倍にしていますにも書きました。
改正法の附則は、施行の時点で効力のある管理規約のうち、改正後の区分所有法に抵触する定めは、2026年4月1日から効力を失うとしています(附則2条3項)。施行日より前に招集の手続きを始めた総会は、改正前の決まりで行います(同条2項)。
国土交通省は2025年10月にマンション標準管理規約を改正し、その概要で、総会の決議の多数決要件(標準管理規約47条)と総会の招集の通知(同43条)を、「標準管理規約に準拠した管理規約の変更をしない場合、区分所有法に抵触するなど、管理規約の変更が必須であるもの」に分類しています。標準管理規約の総会の定足数も、議決権総数の「半数以上」から「過半数」に見直されました。
つまり、規約が古いままのマンションでは、規約の条文と、実際に効力のある決まりがずれている可能性があります。どの条項が抵触して効力を失ったかは、規約ごとに条文を照らして判断することになります。買う前には、規約を改正法に合わせて変更したかどうかを聞いてください。
管理費や修繕積立金の滞納は、その住戸を買った人にも請求できます(8条)。これは改正前と同じです。滞納額は重要事項説明の記載事項ではなく、管理会社が出す重要事項調査報告書で分かります。マンション全体で滞納が多いと、いずれほかの区分所有者が負担することになります。
申込みの前に、仲介業者を通じて次の3つを頼んでください。
管理規約は、2026年4月施行の改正区分所有法に合わせて変更されていますか。
建替え・建物更新・売却・取壊しの決議や、その検討はありますか。
出席者で決まるようになった以上、買ったあとは総会に出るか、書面か代理人で議決権を使うことが、そのまま自分の負担に効きます。修繕積立金の目安は修繕積立金の目安は㎡あたり月いくらかに、管理会社のいないマンションの見方は管理会社のいないマンション(自主管理)を買う前ににまとめました。
決議の要件そのものは、点数に入れていません。どのマンションにも同じ法律がかかるので、物件ごとの差にならないからです。
差が出るのは、管理組合が実際に動けているかどうかです。中古マンションのPROでは、管理(100点中15点)の素点を、回答に応じて次のように動かします。
| 回答 | 管理の素点 |
|---|---|
| 管理費等の滞納なし | +0.08 |
| 滞納が少数あり | −0.05 |
| 滞納が多い | −0.20 |
| 管理計画認定あり | +0.10 |
| 長期修繕計画なし | −0.18 |
分からないと答えた項目は、点を動かさず、仲介業者に聞くことの一覧に回します。その一覧には、総会議事録を見せてもらう依頼と、上の「管理規約は改正区分所有法に合わせて変更されていますか」を必ず入れています。管理の点の付け方はマンションの100点中15点は管理ですに書きました。
この記事の数字は、診断の採点にそのまま使っています。中古マンションを診断する ・ PROでできること