既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅を買ったあとで構造か雨漏りに関わる欠陥が見つかったとき、補修の費用を払う保険です。加入するのは買主ではなく、売主の宅建業者か、検査事業者・仲介事業者です。買主にできるのは「付けてほしい」と頼むことで、検査は引渡しの前に済ませる必要があります。
中古住宅を買ったあとで欠陥が見つかったときに、補修の費用などを払う保険です。引き受けるのは、国土交通大臣が指定した住宅専門の保険会社(住宅瑕疵担保責任保険法人)です。国交省の案内に載っている保険法人は、次の5社です。
| 住宅瑕疵担保責任保険法人 |
|---|
| 株式会社住宅あんしん保証 |
| 住宅保証機構株式会社 |
| 株式会社日本住宅保証検査機構 |
| 株式会社ハウスジーメン |
| ハウスプラス住宅保証株式会社 |
保険に入るには、建築士による検査に合格する必要があります。検査は、検査事業者か保険法人が現場で行います。つまり、この保険が付いている家は、少なくとも一度、保険法人の基準で建物を見られた家です。
出典:国土交通省「既存住宅売買瑕疵保険について」(消費者の方へ)
保険が対象にするのは、住宅のうち次の2つの部分の欠陥です。
| 部分 | 具体的には |
|---|---|
| 構造耐力上主要な部分 | 基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材、床版、屋根版、横架材など。建物の重さや地震の揺れを支える部分 |
| 雨水の浸入を防止する部分 | 屋根と外壁、屋根・外壁の開口部の戸・枠などの建具、雨水の排水管のうち屋根・外壁の内部や屋内にある部分 |
この2つは、新築住宅で売主が引渡しから10年の責任を負う部分(品確法95条)と同じ範囲です。中古住宅には品確法の10年がかからないので、そこを保険で補う形になっています。
特約を付けると、給排水管路や、給排水・電気・ガスの設備まで対象を広げられる商品もあります。水漏れや設備の故障まで備えたいなら、特約があるかどうかを確かめてください。
出典:住宅瑕疵担保責任保険協会「既存住宅かし保険(個人間タイプ)」案内
保険が払うのは、設計や施工のミス(瑕疵)が原因の損害だけです。協会の案内は、自然災害、部材の劣化、長いあいだ定期的な手入れを怠ったことによる不具合などは対象にならないとしています。
中古住宅で「欠陥」と聞いて思い浮かべるものには、年数による劣化も入っています。同じ雨漏りでも、施工のミスが原因なら保険の対象になり、屋根材が古くなったことが原因なら対象になりません。どちらに当たるかは、事故が起きてから調べて決まることで、買う前に分かるものではありません。
地震・台風・浸水で壊れたものは、火災保険と地震保険の領分です。水災の補償を付けるかどうかは、浸水の深さで考えられます。浸水想定区域の家は買ってはいけないのかに書きました。
いちばん誤解されやすいところです。この保険は、事業者が買主に補修を保証し、その保証を保険で裏打ちする仕組みです。だから保険に入るのは事業者で、どの事業者が入るかは、売主が誰かで決まります。
| 型 | 使う場面 | 保険に入る人 |
|---|---|---|
| 宅建業者販売タイプ | 売主が宅建業者(買取再販など) | 売主の宅建業者 |
| 個人間売買タイプ(検査事業者保証型) | 売主が個人 | 建物を検査し、買主に保証する登録検査事業者 |
| 個人間売買タイプ(仲介事業者保証型) | 売主が個人 | 売買を仲介する宅建業者 |
個人間売買タイプは、売主が宅建業者だと使えません。業者が売主のときは、宅建業者販売タイプの対象です。
買主にできるのは、「既存住宅売買瑕疵保険を付けてほしい」と頼むことです。協会の案内も、保険法人に登録された検査事業者か仲介事業者に依頼するよう書いています。登録されている検査事業者は、住宅瑕疵担保責任保険協会の検索ページで探せます。
3つの型で、選べる期間と金額が少しずつ違います。
| 宅建業者販売タイプ | 検査事業者保証型 | 仲介事業者保証型 | |
|---|---|---|---|
| 保険期間 | 2年・5年 | 1年・2年・5年 | 1年・2年・5年 |
| 保険金額 | 500万円・1,000万円 | 500万円・1,000万円 | 200万円・500万円・1,000万円 |
| 免責金額 | 原則10万円 | 原則5万円 | 原則5万円 |
| 填補率 | 売主へ80%、売主の倒産等のとき買主へ100% | 100% | 100% |
払われるのは、どの型も同じ3つです。欠陥を直す費用(修補費用)、直す範囲や方法を決めるための調査費用、工事のあいだの仮住まいや転居の費用です。
出典:国土交通省「住宅瑕疵担保履行法 事業者の方へ」各保険商品の概要。期間と金額は商品によって異なります
宅建業者販売タイプの5年の商品には、始期から2年たってから補償が始まるものもある、と国交省は書いています。期間の長さだけで比べず、いつから補償されるかまで確かめてください。
保険期間と保険金額は、加入する事業者が申込みのときに選びます。協会の案内では、買主の希望を踏まえて選ぶとされています。5年がよい、1,000万円がよい、という希望があるなら、先に伝えておきます。
ふだんは、保険金は事業者に払われ、事業者が補修します。事業者が廃業や倒産で補修できないときは、買主が保険法人に直接請求できます。
保険の付いていない保証は、保証した会社がなくなれば、請求する相手がいなくなります。この保険の違いは、保証の後ろに国が指定した保険法人がいることです。
協会の案内では、対象は原則として1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた、いわゆる新耐震基準に適合する住宅です。それより前に建築確認を受けた住宅は、耐震基準適合証明書などを出すことで入れる場合がある、という扱いです。
境目は建築確認の日で、完成した日や登記の日付ではありません。築年だけでは決まらない理由は、新耐震かどうかは築何年で分かるかに書きました。
もう1つの関門が検査です。検査で劣化事象などが見つかったら、補修してから加入することになります。補修は引渡しの前に行うので、その費用を誰が持つかは、売主との話し合いになります。
中古住宅の住宅ローン控除は、登記簿上の建築日付が1982年(昭和57年)1月1日以後なら、築年の要件を満たします。それより前の家は、耐震基準を満たすことの証明が要ります。国税庁が挙げる書類は3つで、どれか1つで足ります。
| 書類 | 期限 |
|---|---|
| 耐震基準適合証明書 | 取得の日前2年以内に家屋の調査が終わったもの |
| 建設住宅性能評価書の写し | 取得の日前2年以内に評価され、耐震等級が1〜3のもの |
| 既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に係る付保証明書 | 取得の日前2年以内に締結されたもの |
出典:国税庁 タックスアンサー No.1211-3(令和8年4月1日現在法令等)
日付の線が2本あることに注意してください。控除の線は登記の建築日付で1982年 1月1日、保険の線は建築確認の日で1981年6月1日です。
1981年6月以降に建築確認を受け、その年のうちに建った家は、控除の上では「1982年より前」なので証明が要ります。一方、保険の上では新耐震なので、原則どおり入れる対象です。この時期の家では、瑕疵保険の付保証明書が、控除を使うための現実的な道になることがあります。
期限の向きも大事です。付保証明書は、取得の日より前2年以内に結ばれた保険契約のものでなければなりません。引渡しを受けてから入ろうとしても、控除の書類には使えません。控除の床面積・所得の条件と、この診断での計算は中古の住宅ローン控除は、1982年1月1日で分かれますに書きました。
個人の売主は、契約不適合責任を負わない、あるいは引渡しから3か月のように短く区切る、という特約で売ることができます(民法572条)。そういう契約だと、引渡しのあとで構造や雨漏りの欠陥が見つかっても、売主には直してもらえないことがあります。詳しくは中古戸建の契約不適合責任を読むに書きました。
個人間売買タイプの瑕疵保険は、この空白を埋めるものです。保証するのは売主ではなく、検査事業者か仲介事業者です。売主が責任を負わない契約でも、保険の期間中は、構造と雨漏りについての保証が残ります。
売主が宅建業者なら、宅建業法40条により、通知の期間を引渡しから2年以上とする特約を除いて、買主に不利な特約は無効です。業者には最低でも2年の責任があります。保険が付いていれば、業者がその責任を果たせなくなったときの備えになります。
宅建業法の建物状況調査(インスペクション)と、瑕疵保険の検査は、どちらも建築士が建物を見ますが、目的が違います。
| 建物状況調査 | 瑕疵保険の検査 | |
|---|---|---|
| 何のため | 今の状態を買主に知らせる | 保険法人の引受けの基準を満たすかを見る |
| 結果の扱い | 実施の有無と結果の概要が重要事項説明書に書かれる(宅建業法35条1項6号の2) | 合格すれば保険に入れる。劣化事象は補修してから |
| あとの保証 | 無い | 保険期間中、構造と雨漏りの欠陥を保証 |
建物状況調査をしたからといって、保険に入れるわけではありません。何を見て何を見ないかはホームインスペクションの記事に書きました。
宅建業法35条1項13号の「契約不適合責任の履行に関する措置」です。保証保険契約などの措置を講じるかどうかと、講じるならその概要が書かれます。「講じない」となっていれば、保険は付いていません。
ただし、重要事項説明は契約の直前です。そこで「講じない」と知っても、検査を入れて、補修して、加入する時間はもう残っていません。聞くのは申込みの前です。重要事項説明書のほかの項目は重要事項説明書のどこを見るかにまとめています。
保険料は保険法人が決めます。国交省の案内では、個人間売買タイプ(検査事業者保証型)について、戸建住宅で5万円程度からとされています。
検査の料金が保険料と別にかかるかどうか、検査で見つかった劣化の補修にいくらかかるかは、事業者と家の状態しだいです。公的な目安は見つからなかったので、この記事では金額を出しません。誰が払うかにも決まりはなく、売主と買主の話し合いで決めます。
仲介の担当者には、たとえばこう聞きます。
この物件は、既存住宅売買瑕疵保険に入れますか。
入れるなら、検査はいつ、誰が行い、保険期間と保険金額はどうなりますか。
申込みの前に聞いておけば、検査と補修の日程を契約までに組み込めます。引渡しの直前に動き出すと、たいてい間に合いません。
無料の診断では聞いていません。PRO(契約前チェック)では、中古の戸建とマンションで「既存住宅売買瑕疵保険の付保」を聞き、付いていれば加点します。
| 種類 | どこに足すか | 足す幅 |
|---|---|---|
| 中古戸建 | 物件(25点) | 素点に0.05、最大1.25点。長期優良住宅・住宅性能評価・耐震等級と合わせて素点0.22まで |
| 中古マンション | 資産性(20点) | 素点に0.04、最大0.8点 |
付いていない、または分からないと答えた場合、点は引きません。新築では聞きません。中古住宅のための制度だからです。
あわせて、仲介会社への質問のリストに「既存住宅売買瑕疵保険に加入できる物件ですか」を入れています。答えが分からないままでも、この質問を持って行けば、申込みの前に確かめられます。
この記事の数字は、診断の採点にそのまま使っています。中古戸建を診断する ・ 中古マンションを診断する