検査済証は、完成した建物が検査を受けて、法令に合っていると認められた証明です。古い家では無いのがふつうで、無いことは違反建築と同じではありません。ただ、合っていたことを示す紙も無いので、2025年4月から建築確認が要るようになった大きなリフォームで、その差が出ます。
家を建てるとき、建築基準法の手続きは2回あります。
| 書類 | いつ | 何を示すか | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 確認済証 | 工事の前 | 計画(図面)が法令に合っていると確認されたこと | 建築基準法 第6条第1項 |
| 検査済証 | 工事が終わったあと | 完成した建物と敷地を検査し、法令に合っていると認められたこと | 同法 第7条第5項 |
確認済証があっても、図面どおりに建ったかどうかまでは分かりません。それを示すのが検査済証です。この記事で問題にするのは、確認は受けたが、検査済証が無い家です。
工事が終わったら完了検査を申請するのは、建築主の義務です(建築基準法 第7条第1項)。ただ、実際には受けない人が多くいました。国土交通省の資料では、完了検査率は次のように上がっています。
| 年度 | 完了検査率 |
|---|---|
| 1998年度(平成10年度) | 約4割 |
| 2016年度(平成28年度) | 約9割 |
出典:国土交通省「建築確認検査制度の概要」(平成31年3月14日)。率は、各年度の検査済証の交付件数を、同じ年度の確認件数で割ったもの。住宅に限らない、建築物全体の数字です
国交省は2014年のガイドラインで、検査済証の交付を受けていない建築物が「平成11年以前では半数以上を占めていた」と書いています。1990年代に建った中古住宅で検査済証が無いのは、珍しいことではありません。
だから、検査済証が無いことは、違反建築であることと同じではありません。図面どおりに、法令どおりに建っていて、検査を受けなかっただけの家も多いはずです。ただし逆に、法令に合っていたことを示す紙も無い、ということです。
この2つは、役所の記録で見分けられます。検査済証そのものは再発行されませんが、役所の台帳に、検査済証を交付した日付や番号が残っていれば、それを証明してもらえます。
| 取れるもの | 分かること | 根拠 |
|---|---|---|
| 台帳記載事項証明書 | 台帳に載っている確認・検査の交付年月日と番号 | 各自治体の手続き |
| 建築計画概要書・処分等概要書の閲覧 | 確認したときの計画の概要と、確認・検査などの処分の記録 | 建築基準法 第93条の2、同法施行規則 第11条の3 |
東京都の案内(2026年1月23日更新)は、台帳記載事項証明書について次のことをはっきり書いています。
窓口と手数料は自治体ごとに違います。物件の所在地の市区町村か都道府県の、建築指導の担当課で確かめてください。買う前なら、仲介業者に取ってもらうよう頼むのが早いです。
中古住宅の重要事項説明では、建物の建築と維持保全の状況に関する書類を、売主が保存しているかどうかを説明します(宅地建物取引業法 第35条第1項第6号の2ロ)。その書類として、確認の申請書と確認済証、検査済証が名指しされています(同法施行規則第16条の2の3第1号・第2号)。
ここで書かれるのは「保存しているか」です。「無」とあっても、検査を受けていないのか、紙を失くしただけなのかは、この欄からは分かりません。上の台帳で確かめる必要があります。重要事項説明書の読み方は重要事項説明書のどこを見るかにまとめました。
国交省の2014年のガイドラインは、2013年の研究会の報告書から、次の指摘を引いています。
中古住宅の流通段階で、金融機関が融資の可否を判断するに当たり、検査済証が求められる場合が多い
ただ、これは2013年の時点の指摘です。いま、どの銀行が、どういう基準で検査済証を求めているかを示した公的な資料は、見つかりませんでした。民間の住宅ローンの審査基準は公開されていないことが多く、銀行ごとに違う、としか言えません。
フラット35は、手続きの案内を公開しています。「中古住宅 技術基準・物件検査手続のご案内」(2025年10月版)を読むと、書類は次のように扱われています。
つまり、検査済証が無い場合の代わりの書類が、案内の中に書かれています。ただし、フラット35には建物の基準に合うことを示す適合証明が別に要ります。どちらにしても、事前審査の段階で「検査済証が無い」と伝えて、扱いを聞いてください。本審査で家の何を見られるかは、事前審査は人を見ます。本審査は、家も見ますに書きました。
ここが、いま検査済証が効いてくる理由です。2025年4月に改正建築基準法が施行され、いわゆる「4号特例」が縮小されました。
いまの建築基準法 第6条第1項第2号は、「二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超える建築物」を挙げています。木造2階建ての戸建はここに入ります。こうした建物で大規模の修繕・大規模の模様替をするときは、工事の前に建築確認を受けることになりました。以前は、木造2階建ての住宅なら要りませんでした。
大規模の修繕・模様替とは、主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段)のどれか1種類以上を、過半にわたって造り替える工事です。国交省の説明会資料(令和7年11月更新)から、例を並べます。
| 工事 | 建築確認 |
|---|---|
| キッチン・トイレ・浴室など水回りだけのリフォーム | 要らない |
| 手すりやスロープの設置 | 要らない |
| 屋根ふき材だけの葺き替え、カバー工法 | 要らない |
| 屋根を構成する材をすべて造り替え、その範囲が屋根の水平投影面積の過半 | 要る |
| 外壁を構成する材をすべて造り替え、その範囲が外壁の総面積の過半 | 要る |
| 階段の造り替え(過半はその階の階段の数で数える) | 過半なら要る |
出典:国土交通省「建築物の改修における建築基準法のポイント説明会」資料(令和7年11月更新)。国交省自身が「あくまでも例であり、実情に応じて判断すること」と書いています。個別の工事は、設計する建築士か役所に確かめてください
平屋で延べ面積200㎡以下の家は第2号に入らないので、大規模の修繕・模様替でも建築確認は要りません。
既存の家に手を入れる確認申請では、手を入れない部分が法令に合っているかを示す必要があります。その調べ方を、国交省は「既存建築物の現況調査ガイドライン」(第5版、令和8年9月)にまとめています。調査は建築士が行い、指定確認検査機関が行うこともできます。調べ方は、検査済証があるかどうかで次のように分かれます。
| 状況 | 調べる範囲 |
|---|---|
| 直近の工事の検査済証がある | 工事の当時の法令に合っていたと判断できる。調べるのは、その後に法令が変わった項目が中心 |
| 検査済証は無いが、工事に着手した時期が分かる | いまの法令のすべての項目について適合状況を調べ、合わない項目が当時の法令には合っていたかを確かめる |
| 着手した時期も分からない | 建物全体を、いまの法令に合わせる |
さらにガイドラインは、調べても分からなかった項目は「適合していないものとみなし、現行の建築基準法令の規定に適合させます」としています(小規模な建物の基礎の構造など、一部に例外があります)。着手した時期は、確認申請書の副本があればそこに書かれた着手予定日で、無ければ工事請負契約書や登記事項証明書などで明らかにする、とされています。
要するに、検査済証が無い家を大きく直そうとすると、調べる手間が増え、調べきれない部分は直す対象に回ります。工事の範囲も費用も、計画の段階では読みにくくなります。調査の費用について、公的な目安は見つかりませんでした。建築士に見積もりを取るしかありません。
一方で、建て替えるつもりなら、いまの建物の検査済証はほとんど関係しません。建て替えは新しい建物として建築確認を受けるからです。建て替えで効くのは、敷地が道路に2m以上接しているかです。こちらは敷地は道路に2m以上。足りないと、建て替えができませんに書きました。
内見のあと、申込みの前に、仲介業者に聞いてください。
建築確認済証と検査済証は残っていますか。
無い場合、台帳記載事項証明書で、検査を受けたかどうかを確かめてもらえますか。
そのうえで、答えに応じて次に進みます。
検査済証が無いことは、建物の傷みとは別の話です。傷みはホームインスペクションで見るもので、こちらは法令に合っているかの話です。違いはホームインスペクションとデータの診断は、見ているものが違いますに書きました。既存住宅売買瑕疵保険の検査も、法令への適合を確かめるものではありません。
個人の売主から買う場合、契約不適合責任を負わない特約で売られることがあります。検査済証が無いことを知ったうえで買うなら、その前提で特約を読んでください。読み方は個人の売主は「責任を負わない」で売れるにまとめました。
建物の検査済証の有無は、点数に入れていません。無いことが違反を意味しないうえ、聞いてみないと分からない項目だからです。調べていない人の物件を、悪い物件として採点しないようにしています。
そのかわり、中古戸建のPROの「仲介業者に聞くことの一覧」には、「建築確認済証と検査済証は残っていますか」を必ず入れています。答えが分からないままでも、この一覧を持っていけば、申込みの前に確かめられます。ほかに頼む書類は不動産屋に聞くことリストにまとめました。
なお、土地のPROでは、擁壁の検査済証を聞いています。高低差のある土地で、擁壁に検査済証があると答えた場合は、高低差の減点を半分にします。擁壁は造り直すと費用が大きく、検査済証があるかどうかで扱いが変わるからです。